「伝承」の大切さ! 大分 大原瑞雲(仏教壮年会連盟講師)

 先日、お同行のお宅の四十九日の法要が勤まりました。暑い日でした。扇風機を窓際に置いてくださり、心地よい風が汗っかきの私の体を冷やしてくれます。でも、暑さはそれ以上です。袂(たもと)からハンカチタオルを出し、汗を拭いたとたんに事は動き始めました。

 斜め後ろに座っておられた亡きお方のお孫さん(30才前後でしょうか)がすっと立って、もう一つ扇風機をもってきてくれたのです。続いて、長男(施主)の連れ合いさんが、氷が入ったお茶をもってきてくれました。そして、違う方がおしぼりまで。お勤めの最中ですので飲めないし使えませんでしたが、そういえば、この度、ご往生なされたお祖父ちゃんはやさしさの塊のようなお方だったな〜っと、お祖父ちゃんとの思い出が次々と脳裏に浮かんできます。ここのお宅は間違いなく「やさしさ」が子や孫に伝わっているな!と感じながらお勤めが終わりました。

 ところが、このあとご法話を始めたとき「しまった」と思ったのです。親戚の男性の膝にちょこんと座っている男の子と目が合いました。私は10年ほど前から、法事でキンをたたいてくれそうな子どもがいたら、お経中でキン をたたいてもらうのです。その子は2年ほど前にキンをたたいてくれた男の子だったと思いだしました。「今日もキンをたたきたかった」と言わんばかりにこちらを見ているのです。「ごめん」と、心の中で詫びながらご法話が終わり御文章を拝読しました。でも、今から納骨があります。その子と話をしながら納骨塔まで行き、キンをたたいてもらいました。本人もとてもうれしそうでしたが、これをすると、若い両親が、お祖父ちゃんお祖母ちゃんがとても喜んでくれます。そして「亡くなった曾祖父(ひいじい)ちゃん、喜んでるよ!」とその子の頭を撫でてくれます。法事全体がホッコリと温かくなり、お念仏の声が心なしか大きく聞こえてくるようです。

 「伝承」大切ですね。何でもないこのような日常の繰り返しが、お念仏が伝わるご縁となります。

                                       称六字

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